JR旭川駅で乗り継ぎの待ち時間ができた。次の普通列車まで数時間ある。急ぐ旅ではない。乗車券は途中下車を許している。わずかな時間でも駅と街を歩けば、鉄道旅の楽しみは確実に増す。
駅ビルは国際空港のターミナルを思わせる。ガラスと天然木を多用した現代的なデザインで、その壮大さと機能美に驚く。北口から外へ出ると、道北の玄関口にふさわしい賑わいが市街中心部へと続いていた。
表通りと路地裏を歩く。旭川らしい店や風情も目に入るが、全国チェーンの店舗やブランドの看板が目立つ。人出もそちらに集まっている。今やJRのターミナル駅周辺は、全国どこへ行っても似たようなものだ。少し寂しい気もするが、社会情勢の変化やビジネスの経済効率を考えれば当然のことだろう。それによって住民の暮らしや旅行者の体験が豊かになるなら、一介の旅人が文句を言う筋合いはない。
駅ビルに戻り、構内の自由通路を抜けて南口から外へ出る。目の前に広がっていたのは、緑豊かな公園と澄んだ水をたたえる川、そして遠景に連なる大雪山系の山々だった。あさひかわ北彩都ガーデンと忠別川である。これほど自然と一体化した大都市の駅が、他にあるだろうか。まるで大自然の中に巨大な駅舎がそっと置かれているようで、北口の賑わいとのコントラストが際立つ。
そんなことを考えていると、南口の出入口近くに10代らしき男女が数人たむろしているのが目に入った。若者らしい髪型と服装で、スケートボードを手にしている。駅前のタイル張りのスペースで順番に滑走の練習をしており、ホイールがデッキを打つ音と歓声が響く。駅構内も公園も、スケートボードはもちろん自転車さえ禁止されている場所なのに。
順番待ちの者はタバコを吸っている。明らかに未成年で、ここは禁煙エリアだ。駅ビルから出てくる高齢者たちは、通行の邪魔になっている彼らを見て、厄介事を避けるように大回りで通り過ぎていく。
普段から若者の無茶をある程度は許容する姿勢でいるが、一般の駅利用者、特に高齢者に迷惑をかけるのはさすがに見過ごせない。注意しようかと思ったが、私はここでは旅人に過ぎない。この土地には独自の文化や許容のレベルがあるかもしれないし、何より若者たちが逆上して事態が悪化する可能性もある。
どうしたものかと迷っていると、公園の向こうから30歳ほどの男性が小さな子どもを抱いて歩いてきた。娘だろうか。男性の表情は硬く、大股で若者たちに近づいていく。よく通る声で言った。
「おい、お前ら。タバコ吸って補導されようが肺がんになろうが、それはお前たちの勝手だ。ただし灰と吸い殻は始末しろ。今すぐ片付けろ。それから、スケートボードな。フロアと建物を傷つけていないだろうな。それと通行人に迷惑かけてるのは許さんぞ。迷惑かどうかはお前らが決めるんじゃない。ここを通る人が決めるんだ。駅長に謝ってこい。今すぐだ」
若者たちがどう反応するか。固唾を呑んで見守った。すると意外なことに、少年少女たちは素直に「はい、すみません」と頭を下げ、吸い殻と灰を片付けて、建物の壁とフロアにダメージがないかを確かめた。そして「駅長室はどこですか」と近くの売店に尋ねに行った。男性は何事もなかったように、子どもを抱いたまま、その場を立ち去っていった。
ほっとしたと同時に、何かとてつもなく凄いシーンに遭遇した気がした。私は、こんな鉄道駅はなかなかないぞと呟き、旭川が少し好きになって、普通列車に乗るために改札口へ向かった。
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